君の才能ごと、独り占め

靴を履き替えて外へ出ると、夕方の風が頬にやさしく触れた。

昼間より少し涼しい。
なのに、隣にいるだけであたたかい気がする。

数歩歩いたところで、恒一くんの手がそっと私の手に触れた。

びくっとするほどじゃない。
確かめるみたいに、やさしく。

私は少しだけ彼のほうを見る。

「……つなぐ?」

先に聞いてくれる声が、ひどくやさしい。

「うん」

小さく頷くと、恒一くんはゆっくり私の手を握った。

強すぎない。
でも、ちゃんと離さない手。

指先からじんわりあたたかさが広がっていく。

「冷たい」

恒一くんがつぶやく。

「緊張してたからかな」

「まだしてる?」

そう聞かれて、私は少し考える。

「少しだけ」

「そっか」

それだけ言って、彼はつないだ手をほんの少しだけ握り直した。

その動きだけで、言葉より先に伝わるものがある。
大丈夫。
ここにいる。
そんなふうに言われている気がした。

「恒一くん」

「なに」

「さっき、抱きしめてくれてうれしかった」

言ったあとで恥ずかしくなって、少しだけ視線を落とす。

でも恒一くんは笑わなかった。
ただまっすぐ前を向いたまま、静かに言う。

「俺のほうが、抱きしめられてよかった」

「え」

「泣いてる星音、ひとりにしたくなかった」

その一言が、やさしく胸に落ちる。

私は何も返せなくなって、つないだ手を少しだけ握り返した。