君の才能ごと、独り占め

音楽室を出たときには、廊下に差し込む夕方の光が少しだけ薄くなっていた。

さっき泣いたせいで、目元はまだ少し熱い。
でも不思議と、胸の奥は前より静かだった。

話してしまった。
ずっと隠してきたこと。
ピアノが好きだったことも、苦しくなって逃げたことも。

恥ずかしい。
でも、後悔はしていなかった。

隣を歩く恒一くんは、何も急かさない。
何か言わせようともしない。
ただ、私の歩幅に合わせて静かに歩いてくれる。

そのやさしさが、今はひどくありがたかった。

階段を下りて、昇降口の前まで来たところで、恒一くんが足を止める。

「星音」

「うん」

「少し、目赤い」

小さな声だった。
からかうでもなく、心配しすぎるでもなく、ただ事実をそっと伝えるみたいな言い方。