君の才能ごと、独り占め

「星音はちゃんとここまで来た」

「……来ただけだよ」

「それでも来た」

言い切る声がやさしくて、強い。

「またピアノの前に座って、俺の前で弾いた」

胸の奥が熱くなる。

「それって、すごいことだよ」

その一言で、張りつめていたものが少しだけほどける。

私は唇をかんで、目を伏せた。

「……でも、まだ怖い」

本音だった。

「また期待されたらどうしようって思う。すごいって言われると、うれしいのに苦しくなる」

恒一くんは少しだけしゃがんで、私と目線を合わせた。

「じゃあ期待しない」

「え」

「上手く弾けとか、またやれとか、そういう意味で見ない」

その言葉に、私は目を瞬く。

「俺はただ、星音の音が好き」

飾りのない、まっすぐな声。

「うまいからでも、天才だったからでもない」

心臓が苦しいくらい鳴る。