君の才能ごと、独り占め

「それで、ある日……本番で、うまく弾けなかった」

喉が詰まる。
あの日のことは、今でも夢に出るくらい鮮明だ。

「頭が真っ白になって、手が動かなくなって。途中で立て直せたけど、全然だめで」

私は俯く。

「終わったあと、悔しいより先に、もう無理って思った」

やっと言えた。

ずっと誰にもきちんと話してこなかったこと。
星音はピアノが上手い。
そう言われるたびに笑ってごまかしてきたことの奥。

「逃げたの」

小さく言う。

「みんなは事情があるって思ってるかもしれないけど、本当は逃げたんだよ。怖くて、苦しくて、もう期待に応えられないって思って」

言い終わった瞬間、胸の奥がひどく痛んだ。