君の才能ごと、独り占め

「星音」

「うん」

「無理してる顔してる」

その一言で、胸の奥に押し込めていたものが揺れる。

「してないよ」

反射みたいにそう言った。
でも自分でもわかる。
その声は少しだけ弱かった。

恒一くんはすぐには何も言わなかった。
ただ、私の返事を無理に信じたふりもしない。

「さっき教室でも、ピアノの話出たとき少し苦しそうだった」

図星だった。

私は膝の上で指をぎゅっと握る。

「……見てたんだ」

「見てる」

その返事があまりにも自然で、少しだけ泣きそうになる。

「星音のこと、たぶん自分で思ってるより見てる」

やさしい声。
責めるでもなく、暴くでもなく、ただ待ってくれる声だった。

音楽室の窓から夕日が差し込む。
オレンジ色の光が鍵盤を染めて、昔のレッスン室の色を思い出させる。