君の才能ごと、独り占め

一音ずつ弾くたびに、懐かしさと痛みが同時に胸をなぞる。
楽しかった記憶。
苦しかった記憶。
好きだったはずなのに、いつからか怖くなってしまった記憶。

曲が終わるころには、少しだけ息が乱れていた。

鍵盤の上に指を置いたまま、私はしばらく動けない。

静寂のあとで、後ろから小さく足音が近づいてくる。

「……すごい」

恒一くんの声は、ひどく静かだった。

「やっぱり、星音の音好き」

私は振り返らないまま、小さく笑おうとした。
でもうまくできなかった。

「ありがとう」

それだけ言うので精一杯だった。

すると恒一くんは、私のすぐ横まで来て立ち止まる。