君の才能ごと、独り占め

放課後の校舎は、昼間よりずっと静かだった。

部活へ向かう足音や話し声が遠くから聞こえる。
でも特別棟の音楽室の前まで来ると、空気が少し変わる。

私は扉の前で立ち止まった。

「どうした」

隣で恒一くんが低く聞く。

「……ちょっとだけ緊張してる」

正直に言うと、彼は急かさずに小さく頷いた。

「入るのやめてもいい」

その言い方がやさしくて、胸が少しだけ軽くなる。

「ううん。入る」

扉を開けると、夕方の光が差し込んだ音楽室が広がる。
窓際のグランドピアノ。
整然と並んだ椅子。
どこか懐かしくて、少しだけ痛い空気。