君の才能ごと、独り占め

「はい」

「文化祭の演奏を聞いて、来月の音楽発表でもピアノを頼みたいって話が出てる。無理にとは言わないが、考えてみてくれるか」

教室が少しざわめく。

やっぱり。
そう思った瞬間、胸の奥が少しだけ痛くなった。

ピアノは好き。
でも簡単に戻れるほど、私の中では軽いものじゃない。

返事に迷った、そのとき。

机の下で、恒一くんが私の手をほんの少しだけ強く握った。

大丈夫。
急がなくていい。
そう言われた気がした。

私は小さく息を吸ってから答える。

「少し考えさせてください」

先生はすぐに頷いた。

「わかった。返事は急がなくていい」

座り直したあと、私は誰にも見えないように小さく息をつく。