君の才能ごと、独り占め

ホームルームが始まって、ようやく周りが静かになる。

先生の話は耳に入っているはずなのに、半分くらいしか頭に残らない。
だって隣が気になりすぎる。

さっきからずっと、机の下の距離が近い。

少し脚が触れそうになるたびに、どきっとする。
そして先生が黒板を向いた一瞬。

恒一くんの指先が、また私の手に触れた。

今度は、そっと握るみたいに。

「……っ」

思わず息をのむと、彼が小さな声で言う。

「静かに」

「そっちが原因でしょ」

私もほとんど息みたいな声で返す。
すると恒一くんは、前を向いたまま少しだけ笑った。

「月曜まで我慢したから」

その言葉で、昨日の通話が一気によみがえる。

今度会ったら、今日の分までちゃんとかわいがる。

あの声まで思い出してしまって、もうだめだった。

「……覚えてたの」

「忘れるわけない」

小さすぎる会話。
誰にも聞こえない。
それが余計に甘い。

そして恒一くんは、机の下で私の指をひとつだけ絡めた。

恋人つなぎまではいかない。
でもただ触れるよりずっと近い。

「恒一くん」

「なに」

「授業中」

「知ってる」

「ばれたらどうするの」

「その前に離す」

真顔でそんなことを言うから、私は思わず視線を落とした。

そのとき、先生が名前を呼ぶ。

「橘、次の伴奏候補の件だけど」

びくっと肩が揺れた。

教室中の視線が集まる。
私はゆっくり立ち上がった。