君の才能ごと、独り占め

人通りの少ない細い道。
すぐ近くに誰もいないのを確かめるみたいに、恒一くんが一度だけ周りを見る。

それから、少しだけ近づいた。

「星音」

「うん」

「さっき、あそこで止まれたの、わりと奇跡」

「え」

「ほんとは全然足りてない」

その言葉に、心臓が大きく跳ねる。

「……足りてないって」

「キス」

あまりにもまっすぐで、顔が熱くなる。

「だってまだ、思い出すたび嫌になる」

低い声。
静かなのに、切実だった。

「だから、今は俺のことだけ考えてほしい」

その一言で、胸の奥が甘く震える。

私は少しだけためらってから、彼の制服の袖をつかんだ。

「……考えてるよ」

「足りない」

「え」

「もっとほしい」

そんなふうに言われたら、断れるわけがない。

「人、来ないかな」

小さくそう言うと、恒一くんは少しだけ目を細めた。

「来たら離す」

またそれだと思って、少しだけ笑ってしまう。