君の才能ごと、独り占め

「恒一くん」

「なに」

「来てくれてありがとう」

すると彼は少しだけ目を細めた。

「当たり前」

「でも、ほんとに助かった」

「次からは待ち合わせの前でも迎えに行く」

「過保護」

「今日のは過保護じゃ足りない」

真顔で言うから、私はまた少し笑う。

その笑顔を見た恒一くんが、最後に本当に大事そうに私の髪に触れた。

「帰ろう」

「うん」

歩き出そうとした瞬間、彼がまた私の手を引く。

「どうしたの?」

「最後にもう一回」

「え」

「今日は多め」

そう言って、今度は本当に短いキスをひとつだけ落とした。

びっくりして固まる私を見て、恒一くんが少しだけ満足そうに目を細める。

「……それで行ける」

「何が?」

「今度こそ帰れる」

そんなふうに言われたら、もう何も言い返せなかった。

並んで歩き出す廊下は、さっきまでと同じ放課後のはずなのに、少しだけ違って見えた。
怖い出来事はあった。
でもそのあとで、私はちゃんと守られて、気持ちも確かめてもらえた。