君の才能ごと、独り占め

「……ここ」

言うと、恒一くんの表情が一瞬で険しくなる。
けれどすぐに抑え込むみたいに目を伏せた。

「保健室行く?」

「そこまでじゃない」

「気分悪い?」

「少しだけ……びっくりした」

本当は、びっくりだけじゃなかった。
嫌だった。
怖かった。
でも言葉にしようとすると、喉がつまる。

恒一くんは何も急がせなかった。
代わりに、私の手首をやさしく取る。

「こっち」

連れていかれたのは、使われていない視聴覚準備室の前だった。
放課後で人通りも少ない。
彼は扉が閉まっているのを確認して、その前で足を止めた。

「星音」

「うん」

「こっち見て」

ゆっくり顔を上げると、恒一くんの目に、押し隠した怒りと心配が混ざっていた。

「怖かった?」

その一言で、張っていたものが少しだけゆるむ。

私は小さく頷いた。