君の才能ごと、独り占め

恒一くんはそれ以上は何も言わなかった。
ただ一歩前に出る。
それだけで、相手は完全に引いた。

「……悪かったよ」

吐き捨てるように言って、男子は去っていく。

足音が遠ざかってからも、私はしばらく動けなかった。

恒一くんが振り返る。

「星音」

その声はさっきまでと違って、低いけれどやわらかい。

「見せて」

「え」

「触られたとこ」

私は自分の唇の端に、そっと指を当てた。
ほんの一瞬だった。
でもそこだけ熱を持っている気がする。