君の才能ごと、独り占め

けれど相手は、なぜか困らせている自覚がないみたいに言った。

「そんな怖がらなくても」

「怖がってます。離してください」

はっきり言った、そのとき。

男子がさらに顔を寄せてきた。

何が起きるのかわかって、全身が強張る。
避けようとした。
でも腕をつかまれていて、うまく動けない。

唇の端に、一瞬だけ何かが触れた。

頭が真っ白になる。

次の瞬間。

「何してるんですか」

低く、冷えた声が廊下に落ちた。

空気が一瞬で変わる。

男子の手が止まる。
私は反射みたいにその場を離れて、声のしたほうを見る。