「……熱い」 短くつぶやく声が低い。
その一言だけで、急に自分がほんとうに具合悪い気がしてきて、胸が心細くなる。
「保健室行くぞ」 「ひとりで行けるよ」 「行かせねぇ」 「でも」 「でもじゃない」
きっぱり言い切って、神崎くんはわたしの鞄を持った。
教室の空気が少しざわつく。 でも今のわたしには、恥ずかしさより安心のほうが大きかった。
保健室で熱を測ると、やっぱり微熱があった。
先生に早退をすすめられて、わたしは連絡帳を受け取る。 頭がぼんやりして、字まで少し遠く感じる。
「送る」 神崎くんが当然みたいに言った。
「授業あるよ」 「知るか」 「だめだよ」 「おまえひとりで帰すほうがだめ」
その声があまりにもまっすぐで、もう何も言い返せなかった。



