怖いはずの彼は、今日も私にだけ甘い♡

そう言いながらも、耳が少し赤い。 珍しい反応に、わたしの胸はくすぐったくなる。

「神崎くんでも照れるんだ」 「照れる」 「なんかうれしい」 「おまえのせいだけどな」

そのあと少しだけ沈黙が落ちる。 でも、静かなのに気まずくない。 肩が触れている距離が、むしろ心地いい。

風が吹いて、わたしの髪が少しだけ揺れた。 その髪を、神崎くんがそっと耳にかける。

丁寧で、やさしい手つき。

「……好き」 ぼそっと落ちたその声に、心臓がきゅっとなる。

「わたしも」 すぐ返すと、神崎くんの目がやわらかく細まった。

「次、もっとちゃんとしたデートする」 「今日もちゃんとしてるよ」 「まだ足りねぇ」 「そうなの?」 「おまえをもっと喜ばせたい」 その言葉がうれしすぎて、泣きそうになる。

「もう十分うれしいよ」 「足りない」 「神崎くん基準きびしい」 「おまえ相手だとそうなる」

ほんとうに、どこまで甘いんだろう。

初デートは、思っていたよりずっと自然で、ずっと幸せだった。 緊張はした。 何度も心臓が苦しくなった。 でもそれ以上に、神崎くんといる時間が落ち着いて、あたたかかった。

怖いはずの彼は、学校の外でもやっぱりわたしにだけ甘すぎる。 そしてその甘さは、制服のない休日のほうがもっとまっすぐで、もっとずるい。

帰りの駅前で別れるころには、少しだけ寂しくなっていた。

「送る」 「駅前なのに?」 「送れるとこまで」 「ふふ、ありがとう」

そんなふうにまた並んで歩きながら、わたしは思う。

たぶんわたしは、これから先も何度だってこの人を好きになる。 やさしいところも、不器用なところも、独占欲が強いところも。 全部ひっくるめて、もっともっと好きになっていく。