怖いはずの彼は、今日も私にだけ甘い♡

文化祭のざわめきが遠くなる。

「おつかれ」 耳元で落ちる声に、胸がじんと熱くなる。

「神崎くんも」 「接客、がんばってたな」 「見てた?」 「ずっと見てた」 「ずっと!?」 「だからしんどかった」 「しんどかったんだ……」 「でもかわいかったから許す」

わたしは彼の胸に額をつけたまま、小さく笑った。

ほんとうに、甘い。 こわいはずの彼は、やっぱりわたしにだけ甘すぎる。

そして文化祭みたいな特別な日ほど、その溺愛は隠しきれなくなるらしい。

帰り道、夕暮れの校門を並んで出ながら、神崎くんがぽつりと言った。

「来年も接客なら、俺ずっと隣にいる」 「それ接客にならないよ」 「いいだろ」 「よくないよ」 「じゃあ客やる」 「毎回来るの?」 「毎回行く」 「それはそれで困るかも」 「困っても行く」

真顔で言い切られて、もう笑うしかない。

つないだ手があたたかい。 今日あったいろんなことが、全部この手の温度にほどけていく気がした。

「神崎くん」 「ん」 「好き」 「……今の、今日いちばん効いた」 「ほんと?」 「今日はもう離さねぇ」

少し強く握られた手に、わたしも握り返す。

文化祭は終わった。 でも、神崎くんの溺愛はたぶんここからまた少し強くなる。

そんな予感がして、わたしはこっそり笑った。