怖いはずの彼は、今日も私にだけ甘い♡

「終わった」 「うん」 「もう我慢しなくていい?」 低い声でそう聞かれて、どきりとする。

「な、何を……」 「決まってるだろ」 「ここ教室だよ」 「今みんな写真で忙しい」 「でも」 「少しだけ」

その言い方がずるくて、断れるわけがない。

教室の隅、カーテンで半分隠れる窓際まで連れていかれる。 さっきまでのにぎやかさが嘘みたいに、その一角だけ静かだった。

神崎くんはわたしの前に立つと、数秒、じっと見つめてくる。

「今日、ずっとかわいかった」 「またそれ……」 「ずっと言いたかった」 「そんなに?」 「足りねぇくらい」

それから彼は、わたしの頬に手を添えた。

「他校のやつに声かけられてるとこ見たとき、まじで連れて帰りたくなった」 「神崎くん」 「でもおまえ、ちゃんと断ってた」 「うん」 「俺だけって言った」 「……うん」 「それでだいぶ救われた」

少しだけ弱さの混じった声に、胸が締めつけられる。

神崎くんだって不安になる。 余裕があるわけじゃない。 それでも、わたしを信じようとしてくれていたんだと思うと、たまらなく愛しくなった。

「わたしも」 「ん?」 「今日ずっと、神崎くんかっこいいなって思ってた」 「……は」 「助けてくれるし、守ってくれるし」 「ちょっと待て」 「え?」 「急にそういうの言うな」 「だめ?」 「だめじゃねぇけど心臓に悪い」

珍しく少しだけたじろぐ神崎くんがかわいくて、わたしは思わず笑う。

その瞬間、彼の目がやわらかく細められた。

「……ほんと好き」 かすれた声でそう言って、神崎くんはそっとわたしを抱きしめた。

強い腕。 でもやさしい体温。