怖いはずの彼は、今日も私にだけ甘い♡

その言い方があまりにも真剣で、思わず笑ってしまう。

「がんばって我慢してくれてるんだ」 「笑うな」 「ごめん」 「全然悪いと思ってねぇ顔」 「ちょっとだけ」 「あとで覚えとけ」

低い声で言うのに、目はどこか甘い。

そのとき、教室の外から「神崎ー」と呼ぶ声がした。 厨房の手が足りないらしい。

神崎くんは小さく舌打ちしてから、わたしのほうへ向き直る。

「なんかあったらすぐ呼べ」 「うん」 「我慢しねぇでいい」 「うん」 「あと」 「あと?」 「ほかのやつに笑いすぎんな」 「接客だよ?」 「知ってる」 「それは無理かも」 「……はあ」

ため息をついたあと、神崎くんは周りを一瞬だけ確認した。 人が来ない影の場所。 その一瞬のすきに、彼の指がわたしの頬に触れる。

ちゅっと、ほんの一瞬だけ。

頬にキスされたと気づいたのは、そのあとだった。

「っ……!」 真っ赤になるわたしを見て、神崎くんは少しだけ意地悪く笑う。

「充電」 「こんなとこで何してるの!」 「足りねぇから」 「わたしの心臓がもたないよ……!」 「それでもかわいい」

そう言い残して、神崎くんは何事もなかったみたいに厨房へ戻っていった。

ずるい。 あまりにもずるい。