怖いはずの彼は、今日も私にだけ甘い♡

私もつられて立ち止まると、神崎くんはゆっくりこっちを向いた。

夕焼けの中で見る顔は、いつもより少しだけやわらかかった。

「好きなやつに優しくすんの、普通だろ」

頭の中が真っ白になる。

今、好きって言った。

たしかに、言った。

「……え」 「鈍すぎ」 「だ、だって……」 「伝わってねぇとか、まじかよ」

神崎くんは片手で髪をかき上げる。 その仕草すら絵になるのが悔しい。

「最初から、おまえばっか見てた」 「最初から……?」 「席隣になった日。びびってんのに、ちゃんと俺に謝ってきただろ」 「それは普通じゃ……」 「みんな逃げる」 「……」 「俺のこと、見た目だけで決めるやつばっかだった」

その声は静かだった。 怒っているわけじゃない。 でも、少しだけ寂しそうだった。

私は胸がぎゅっと痛くなる。

神崎くんは、ずっとひとりだったのかもしれない。

「おまえは違った」 「私、最初はこわいって思ってたよ」 「知ってる」 「でも、ちゃんと助けてくれて、優しくしてくれて……本当は全然違うってわかったの」 「……ん」 「だから、その」

喉が震える。

こんな大事なこと、ちゃんと言いたいのに、緊張で声がうまく出ない。

それでも、逃げたくなかった。