怖いはずの彼は、今日も私にだけ甘い♡

春の朝は、まだ少しだけ空気が冷たい。

新しいクラスの名簿が貼り出された廊下で、私は自分の名前を見つけるなり、小さく息を吐いた。

二年三組。

仲のいい友だちと離れてしまったことよりも、もっと気になったのは、その名簿の少し下にある名前だった。

神崎 蓮

その名前を見つけた瞬間、まわりのざわめきが一気に大きくなる。

「うわ、神崎と同じクラスの人かわいそ……」

「目つきやばいし、ケンカ強いらしいよ」

「先輩までビビってるって聞いた」

ひそひそ声があちこちから聞こえてきて、私は思わず名簿から目をそらした。

神崎蓮。

この学校で、その名前を知らない人はいない。

授業はちゃんと出ているのに、近寄りがたい。 いつもひとりで、愛想もなくて、誰かと群れることもない。 黒髪に鋭い目つき。背も高くて、少し睨まれただけで足がすくみそうになる。

そして、よくない噂ばかりが先に広がっている人。

正直、こわい。 できれば関わりたくない。

そう思いながら教室に向かうと、私の席は窓際の後ろから二番目だった。

その隣の席の名札を見て、私は固まる。

神崎 蓮

「……うそでしょ」

思わず小さくつぶやいた、そのとき。

「どけ」

低くてぶっきらぼうな声が背後から落ちてきた。

びくっと肩を震わせながら振り返ると、噂の本人が立っていた。