冬の眠り

いつも、彼女は寂しそうにしていた。
悲しそうだった。

笑っているはずなのに、彼女はどこか辛そうだった。

彼女は言った。

「無理なんてしてないよ?」

その笑顔は、少しだけ、本物に見えた。
けれど、やはり苦しそうで。

「嘘ついてるだろ」

そう言った。
言ってしまった。

「そんなことないよ」

そう、彼女は笑った。
彼女の瞳からハイライトが消えるような錯覚を覚える。

「莉冬」
「……あぁ、ごめん。ぼーっとしてた。どうかした?」

部活の声が、中途半端に開いた窓から聞こえる。
隣の教室から、吹奏楽部が楽器を吹く音がする。

その音の群れが、さっきより低い音に聞こえた。

「最近、寝れてるか?」
彼女は一瞬、悩んだ様子を見せた後に言った。


「ちゃんと寝てる。余計なお世話」
「そうかよ」

沈黙が流れる。
吹奏楽部の演奏が終盤に差し掛かる。

「ねえ、」
「何だよ」

息を吸う音が、隣から聞こえた。
彼女はこちらを見ずに、言った。

「別れよっか、私達」
「……どうして」
「合わないから」

彼女のその言葉に、迷いはなかった。

「わかっ、た」
「今までありがとう、優海……いや、冬野くん」

冬野くん。
その呼び方が、俺たちの別れの合図だった。

「じゃあまたな、白雪」
「うん、またね」

そう言ったきり、彼女の姿を見ることはなかった。

「くだらねぇ嘘つきやがって。馬鹿」