転生悪役令嬢が名探偵ですわ!?

 生徒会室を出ると。

「どうだった?」

 廊下で待っていたカイルが尋ねた。

「リリアさんは、事件前から誰かに監視されていたようですわ」

「……そうなんだ」

 カイルは難しい顔をした。

「それなら、犯人は事件の直前に突然現れた人物じゃないかもしれないね」

「ええ」

「ずっとリリアを見ていた人物」

 その言葉に。

 アリアは足を止めた。

「……そうですわ」

「どうしたの?」

「犯人は、リリアさんの行動をかなり詳しく知っていた」

「うん」

「だから、彼女を旧図書塔へ呼び出すことができた」





 再び旧図書塔。

 アリアは事件現場の扉を前にしていた。

「鍵は内側からかかっていた」

「そう」

 カイルも横で確認する。

「窓は?」

「開いていた形跡なし」

 アリアは扉の隙間を覗き込む。

 そして。

「…………」

 扉の金具。

 鍵穴。

 床。

 以前見つかった、ほんの小さな傷。

「これですわ」

「何か分かった?」

「まだ仮説ですけれど」

 アリアは指先で床の傷をなぞる。

「細い糸のようなものを使った」

「糸?」

「ええ」

 鍵に細い糸を結びつける。

 犯人は部屋から出る。

 そして外から糸を引く。

 鍵が回る。

 最後に糸だけを回収する。

「だから犯人は、鍵を持ち出す必要がなかった」

「なるほど」

「問題は――」

 アリアは顔を上げる。

「誰がこんな仕掛けを知っていたのか」

「…………」

 特殊なインク。

 皇太子の部屋。

 リリアへの監視。

 旧図書塔。

 密室。

 そして。

 犯人は、これら全てを繋げられる人物。

「…………」

 少しずつ。

 少しずつ。

 何かが形になっていく。

「もう少しですわ」

 ――そう。

 もうすぐ。

 全てが繋がる。

 そんな確信が。

 胸の奥に生まれていた。