転生悪役令嬢が名探偵ですわ!?

 生徒会室。

 そこにいたのはセドリックだった。

 リリアの弟。

 そして学園の生徒会長。

「アリア嬢」

「セドリック殿。少しお伺いしたいことがありますの」

「姉さんのこと?」

「ええ」

 セドリックは静かに頷いた。

「何でも聞いて」

「事件の前、リリアさんの様子はどうでした?」

 その質問に。

 セドリックの表情が僅かに曇った。

「……怯えていた」

「やはり」

「何か気づいていたんだと思う」

「何に?」

「誰かに見られている、と」

 アリアは息を呑んだ。

「具体的には?」

 セドリックは少し考えた。

「廊下を歩いている時。

 図書室にいる時。

 中庭にいる時。

 何度も視線を感じると言っていた」

「姿は見た?」

「見ていない」

「声は?」

「聞いていない」

「つまり、誰かに監視されていると思っていたけれど、正体は分からなかった?」

「そういうことだ」

 そう言うとセドリックは目を伏せた。

「姉さんに、しばらく学園を休めと言ったんだ」

「なぜ?」

「怖かったんだ」

「......」

「姉さんが殺されるんじゃないかと思っていた」

 アリアは黙った。

 セドリックの手が、わずかに震えている。

「でも、姉さんは聞かなかった」

「何と?」

「『逃げたくない』って」

「…………」

 セドリックは拳を握る。

「それが最後の会話になった」

 アリアは何も言えなかった。

 少なくとも。

 彼がリリアを憎んでいたようには見えない。

 むしろ。

 誰よりも心配していた。

「事件当日の十時頃、セドリック殿は?」

「生徒会室にいた」

「ずっと?」

「ああ」

「証人は?」

「生徒会のメンバーが数人いる」

 ちょうどその時。

「会長ならずっといましたよ」

 背後から生徒が顔を出した。

「十時頃は会議してましたし」

「その通りです」

 別の生徒も頷く。

「会長が席を外したのは昼休みです」

「…………」

 これなら疑う余地はない。

「ありがとうございます」

 アリアは立ち上がった。

「姉さんを、頼む」

 セドリックが言った。

「え?」

「犯人を見つけてほしい」

 アリアは一瞬だけ目を見開く。

「……必ず」

 そう答えた。