【偽】カップルですが、本当の恋を教えてください

〈side 緋雁〉
桃祢の熱愛報道が出て彼女がぎこちなく仕事に行き、部屋には男3人。
全員スマホを見つめては天を仰いだり額を押さえたり、思いつめたように顔を見合わせる。
やがて葛が自室に閉じこもり、珀亜と2人きりになった。
「・・・緋雁」
「わかってるよ」
「メンバーがあいつを信じなかったら、誰があいつを信じてやれるんだよ」
「わかってるってば・・・!」
そんなこと、わかってる。俺だって、頭では分かってるんだよ・・・!
熱愛なんて、嘘だってわかってる。信じてるとかじゃなくて、100%嘘だ。
嫌なだけ。桃祢が他の男と付き合ってるように思われてるのが、不快なだけ。
「俺らがあいつの味方じゃなくてどうするんだよ・・・」
「味方に決まってるだろ、」
「お前は味方になれてないんだよ!自分の気持ちを押し付けてるだけなの!」
・・・こんなに怒ってる珀を、初めて見た。
他人事のように、そう感じた。珀の瞳は見たことがないくらい、怒りに染まっていた。
自分の気持ちを・・・押し付けてるだけ。
俺は・・・そう、なのか・・・?
「あいつは今悩んでるのに!俺らに迷惑かけちゃったって悩んでるのに!お前は勝手に不機嫌になって!桃祢のこと好きだからって勝手に怒って!あいつが不安になってんだろーが・・・!仕事まであと何時間あると思ってんだよ・・・」
自分の感情に身を任せるように、そう言い放つ珀。
こいつはこんなに桃祢を想ってるのに・・・俺は‟自分が嫌だから”って怒って・・・。
桃祢に嫌な思いをさせて・・・最低、だ。
「好きなんだろ・・・」
「・・・・うん」
「好きなら・・・これ以上あいつを傷つけないでやってくれよ・・・」
疲れたように、愛情のこもった瞳で珀が言った言葉に、ハッとした。
こいつは・・・。

「俺だって・・・好きだよ。あいつのこと、本気で好きだよ」

目を伏せ、自分に言い聞かせるように呟く珀。
その姿が、このままだと消えてしまいそうな儚い花のようで。
声が声にならず、ひゅっと喉が鳴った。
「俺は、あいつが幸せなだけでいい。俺が選ばれなくていい。あいつが幸せになってるところを見れるだけで、いいんだよ」
俺は違う。俺はそんな珀みたいな、天使みたいな思考は持てない。
桃祢が欲しい。幸せになってほしい。俺が幸せにしたい。
「俺とお前は違う。俺じゃあいつを幸せにできない。お前じゃないとあいつは・・・桃祢は、幸せになれないだろ」
「・・・っ」
乞うようにそう言われ、思わず目を見開いた。
実はこいつは葛よりも愛が重いが、自己肯定感はゼロなので、その気持ちは絶対に隠そうとする癖がある。
「なぁ・・・頼むよ。あいつを幸せにしてやってくれよ」
他力本願で情けないその言葉なのに、気が付くと俺は頷いていた。

「昨日桃祢にしたことも弁明して来いよ?」
「っなんで知って」
「様子がおかしいからカマかけただけ。やっぱりなんかしたのか」
「やっべ・・・」

〈side 緋雁 END〉