結婚してから、遥斗は雪に「愛してる」と言ったことがほとんどなかった。
言葉にしなくても、分かっている。
それが遥斗の考えだった。
九州男児らしく、照れくさくて、口に出すのも苦手だった。
けれど――。
蒼生が三歳になった頃。
「ママ、大好き!」
「ママ、かわいい!」
「ママと一緒にいたい!」
蒼生が雪に抱きついている姿を見ていると、遥斗の胸が少し苦しくなった。
――俺も、雪のことが大好きなのに。
どうして言えないんだろう。
ある日の夜。
雪が家事をしている間、遥斗は蒼生を隣に座らせた。
「なあ、蒼生」
「なあに?」
「パパ、ちょっと相談があるんだけど」
「そうだん?」
「うん」
遥斗は真剣な顔をする。
「パパはママのこと、大好きなんだ。でも、ママに『愛してる』とか『大好き』って言うの、恥ずかしいんだ」
「なんで?」
「……分からない。言わなくても伝わってると思ってたんだ」
蒼生は少し考えた。
「パパ、ママに言えばいいじゃん」
「どうやって?」
「『ママ、だいすき』って!」
「……」
遥斗は三歳の息子を見つめる。
「それだけ?」
「うん!」
蒼生は笑った。
「ママ、言ってもらったら嬉しいよ」
「そうかな」
「蒼生だったら嬉しい!」
遥斗は思わず笑った。
「そっか……」
蒼生は遥斗の手を握る。
「パパも言ってみて」
「今?」
「うん!」
「……」
遥斗は照れながら立ち上がった。
キッチンにいる雪を見つめる。
「雪」
「ん?」
振り返った雪に、遥斗は少し恥ずかしそうに笑った。
「……大好きだよ」
雪は一瞬、驚いた顔をした。
「……え?」
遥斗の顔は真っ赤だった。
「今まで言わなかったけど……俺、雪のこと愛してる」
雪の目に、じわっと涙が浮かぶ。
「遥斗……」
蒼生が嬉しそうに拍手する。
「パパ、できた!」
三歳の小さな息子に背中を押されて――。
遥斗は初めて、素直な気持ちを言葉にした。
雪は笑いながら遥斗のところへ歩いていき、そっと抱きしめた。
「私も、愛してるよ」
遥斗は照れながら、雪を抱きしめ返した。
「……言葉にするのも、悪くないな」
「うん」
その日から遥斗は、少しずつ変わっていった。
愛しているなら、ちゃんと言葉にする。
大切な人には、大切だと伝える。
それを教えてくれたのは――三歳の息子、蒼生だった。
言葉にしなくても、分かっている。
それが遥斗の考えだった。
九州男児らしく、照れくさくて、口に出すのも苦手だった。
けれど――。
蒼生が三歳になった頃。
「ママ、大好き!」
「ママ、かわいい!」
「ママと一緒にいたい!」
蒼生が雪に抱きついている姿を見ていると、遥斗の胸が少し苦しくなった。
――俺も、雪のことが大好きなのに。
どうして言えないんだろう。
ある日の夜。
雪が家事をしている間、遥斗は蒼生を隣に座らせた。
「なあ、蒼生」
「なあに?」
「パパ、ちょっと相談があるんだけど」
「そうだん?」
「うん」
遥斗は真剣な顔をする。
「パパはママのこと、大好きなんだ。でも、ママに『愛してる』とか『大好き』って言うの、恥ずかしいんだ」
「なんで?」
「……分からない。言わなくても伝わってると思ってたんだ」
蒼生は少し考えた。
「パパ、ママに言えばいいじゃん」
「どうやって?」
「『ママ、だいすき』って!」
「……」
遥斗は三歳の息子を見つめる。
「それだけ?」
「うん!」
蒼生は笑った。
「ママ、言ってもらったら嬉しいよ」
「そうかな」
「蒼生だったら嬉しい!」
遥斗は思わず笑った。
「そっか……」
蒼生は遥斗の手を握る。
「パパも言ってみて」
「今?」
「うん!」
「……」
遥斗は照れながら立ち上がった。
キッチンにいる雪を見つめる。
「雪」
「ん?」
振り返った雪に、遥斗は少し恥ずかしそうに笑った。
「……大好きだよ」
雪は一瞬、驚いた顔をした。
「……え?」
遥斗の顔は真っ赤だった。
「今まで言わなかったけど……俺、雪のこと愛してる」
雪の目に、じわっと涙が浮かぶ。
「遥斗……」
蒼生が嬉しそうに拍手する。
「パパ、できた!」
三歳の小さな息子に背中を押されて――。
遥斗は初めて、素直な気持ちを言葉にした。
雪は笑いながら遥斗のところへ歩いていき、そっと抱きしめた。
「私も、愛してるよ」
遥斗は照れながら、雪を抱きしめ返した。
「……言葉にするのも、悪くないな」
「うん」
その日から遥斗は、少しずつ変わっていった。
愛しているなら、ちゃんと言葉にする。
大切な人には、大切だと伝える。
それを教えてくれたのは――三歳の息子、蒼生だった。

