その日、雪は蒼生を連れて会社に来ていた。
蒼生は遊びながら、遥斗が仕事をしている様子を見ていた――はずだった。
ところが、蒼生は遥斗が仕事をせずに休憩しているところを見つけてしまった。
「佐々木しゃん、これママに言っていいの?」
「いいですよ」
佐々木が笑って答えた。
そして、その言葉通り。
蒼生は雪に全部報告した。
「ママ、パパね、おしごとしてなかった!」
「……遥斗?」
「はい……」
雪の表情が変わった。
会社に来ていた雪は、遥斗のところへ歩いていく。
「蒼生が見てる前で仕事をサボるとか、ありえんのやけど!」
「ご、ごめん……」
「毎日してるとか、ない?」
「毎日じゃない!」
「本当に?」
「……たまにです」
「たまにでも駄目でしょう!」
雪の声が会社中に響く。
遥斗は黙ってしまった。
「蒼生がパパのこと見てるんだよ? 子どもに見られてる前で、仕事をサボる姿を見せるなんて……」
「ごめんなさい」
雪はいつもより怒っていた。
それをすぐそばで見ていた佐々木は、少し慌てる。
「雪さん、まあまあ……」
「佐々木さん!」
「はい!」
「この人、社長ですよね?」
「はい……」
「だったら、ちゃんとしてもらわないと困ります!」
「それは……おっしゃる通りです」
佐々木は苦笑しながら、雪をなだめる。
「でも、ここ会社ですから。少し落ち着いてください」
「……」
雪は一度深呼吸した。
隣では蒼生が心配そうに遥斗を見ている。
「パパ……」
遥斗は蒼生の目線に合わせるようにしゃがんだ。
「ごめんな、蒼生。パパ、ちゃんと仕事する」
「うん!」
蒼生は安心したように笑った。
佐々木はその様子を見ながら、思わず笑ってしまう。
「社長、二歳の息子さんにまで監督されるようになりましたね」
「……佐々木さん」
「はい?」
「余計なこと言わないで」
「すみません」
会社には、社員たちの小さな笑い声が広がった。
社長の遥斗は、会社では誰よりも頼られる存在。
けれど家族の前では――。
妻と二歳の息子には、どうやら敵わないようだった。
蒼生は遊びながら、遥斗が仕事をしている様子を見ていた――はずだった。
ところが、蒼生は遥斗が仕事をせずに休憩しているところを見つけてしまった。
「佐々木しゃん、これママに言っていいの?」
「いいですよ」
佐々木が笑って答えた。
そして、その言葉通り。
蒼生は雪に全部報告した。
「ママ、パパね、おしごとしてなかった!」
「……遥斗?」
「はい……」
雪の表情が変わった。
会社に来ていた雪は、遥斗のところへ歩いていく。
「蒼生が見てる前で仕事をサボるとか、ありえんのやけど!」
「ご、ごめん……」
「毎日してるとか、ない?」
「毎日じゃない!」
「本当に?」
「……たまにです」
「たまにでも駄目でしょう!」
雪の声が会社中に響く。
遥斗は黙ってしまった。
「蒼生がパパのこと見てるんだよ? 子どもに見られてる前で、仕事をサボる姿を見せるなんて……」
「ごめんなさい」
雪はいつもより怒っていた。
それをすぐそばで見ていた佐々木は、少し慌てる。
「雪さん、まあまあ……」
「佐々木さん!」
「はい!」
「この人、社長ですよね?」
「はい……」
「だったら、ちゃんとしてもらわないと困ります!」
「それは……おっしゃる通りです」
佐々木は苦笑しながら、雪をなだめる。
「でも、ここ会社ですから。少し落ち着いてください」
「……」
雪は一度深呼吸した。
隣では蒼生が心配そうに遥斗を見ている。
「パパ……」
遥斗は蒼生の目線に合わせるようにしゃがんだ。
「ごめんな、蒼生。パパ、ちゃんと仕事する」
「うん!」
蒼生は安心したように笑った。
佐々木はその様子を見ながら、思わず笑ってしまう。
「社長、二歳の息子さんにまで監督されるようになりましたね」
「……佐々木さん」
「はい?」
「余計なこと言わないで」
「すみません」
会社には、社員たちの小さな笑い声が広がった。
社長の遥斗は、会社では誰よりも頼られる存在。
けれど家族の前では――。
妻と二歳の息子には、どうやら敵わないようだった。

