月影に咲く、一輪の華


その頃。

屋上へ向かう階段の途中で、夜凪は足を止めていた。

さっきから、どうしても気になっていた。

旧校舎での星羅の顔。

鎖を見た瞬間の、あの怯え方。

そして――。

何事もなかったように笑って、星夜の隣へ戻ったこと。

夜凪「…………」

放っておけばいい。

そう思っていた。

でも、気づけば屋上まで来ていた。

扉を開ける。

夜凪「……星羅?」

返事がない。

屋上を見渡す。

そして、隅に人影を見つけた。

夜凪「……!」

壁際に小さく蹲っている星羅。

肩が激しく上下している。

星羅「はっ……はぁっ……!」

夜凪「…………」

夜凪の表情が変わる。

さっきまでとは違う。

明らかに苦しんでいる。

夜凪「……おい」

星羅「……っ、は……」

夜凪は、ゆっくり星羅へ近づいた。

夜凪「星羅」

その声にも、星羅は反応できない。

ただ必死に息を吸おうとしている。

夜凪「…………」

夜凪は初めて――。

星羅が本当に限界まで追い詰められている姿を見た。