月影に咲く、一輪の華

男「星夜の姉ちゃんってのは――ずいぶん面白そうな女だな」

星羅「……?」

私はその男を見つめる。

なんだろう。

初めて会ったはずなのに、妙に嫌な感じがする。

その視線が、気持ち悪い。

星夜「……姉ちゃんを見るな」

男「おいおい。そう怖い顔すんなよ」

星夜「…………」

男は楽しそうに笑う。

男「お前の姉ちゃん、昨日から随分と話題になってんだぜ?」

星羅「私が?」

男「ああ。転入初日に月影の屋上に現れて、豹牙と普通にやり合って、その上――」

男の視線が私に向く。

男「星夜より強いんだろ?」

星羅「……うん」

男「へぇ」

星羅「でも、それがどうしたの?」

男「いや……」

男は椅子からゆっくり立ち上がった。

男「面白ぇなと思って」

一歩。

こちらへ近づく。

星夜がすぐに私の前へ出た。

星夜「来るな」

男「またそれかよ」

星夜「……姉ちゃんには触れさせねぇ」

男「そんなに大事か?」

星夜「当たり前だろ」

即答だった。

その言葉に、私は星夜の背中を見る。

やっぱり。

星夜は私を守ろうとしている。

あの日とは違う。

もう、あの頃の小さな弟じゃない。

だけど――。

男「……なら、お前がどこまで守れるか見せてもらおうか」

星夜「……何?」

男が指を鳴らす。

すると、周りにいた男たちが一斉に動き出した。

黒羽「……っ!」

黒羽が前へ出る。

黒羽「お前ら、桜凛の生徒には手ぇ出すなよ」

豹牙「分かってる」

朔夜「星羅、下がれ」

來夢「星羅ちゃん、こっち!」

琉生「星羅さん!」

一気に空気が張り詰める。

私は星夜の背中を見つめた。

星羅「……星夜」

星夜「……何」

星羅「私も戦う」

星夜「駄目だ」

星羅「なんで?」

星夜「俺が守る」

その言葉に、胸が少しだけ熱くなる。

でも――。

星羅「私も、星夜を守る」

星夜「…………」

二人とも、一歩も譲らない。

その様子を見ていた男が、面白そうに笑った。

男「……なるほどな」

男「お前ら姉弟――」

その目が、星羅へ向く。

男「随分とお互いに執着してんだな」

星羅「…………」

その瞬間。

胸の奥が、ぞわっとした。

その言葉だけが――。

なぜか、異様に気持ち悪かった。