月影に咲く、ただ1人の華


私はすぐに星夜のところへ駆け寄った。

星羅「星夜!」

星夜「……姉ちゃん」

星羅「大丈夫!?」

星夜「……ああ」

でも、その声は明らかに震えていた。

視線も、ずっと鎖に向けられている。

星羅「…………」

分かった。

星夜も思い出してる。

あの日のことを。

私が鎖に繋がれていたこと。

自分が何もできなかったこと。

あの部屋で、怖くて泣いていたこと。

星羅「……大丈夫だよ」

私は星夜をぎゅっと抱きしめた。

星羅「私がいるから」

星夜「…………」

星羅「もう大丈夫」

自分の身体もまだ震えている。

それでも、星夜を抱きしめる。

怖い。

あの鎖を見るのは怖い。

監禁されていた記憶も怖い。

でも――。

星夜が怯えている方が、もっと怖い。

星羅「……怖かったね」

星夜「……」

星羅「でも、もう大丈夫だから」

星夜の手が、ゆっくり私の背中に回る。

星夜「……姉ちゃんも」

星羅「え?」

星夜「姉ちゃんも……怖かっただろ」

星羅「…………」

一瞬、言葉が出なかった。

でも私は笑った。

星羅「ううん」

星羅「星夜がいるから大丈夫」

星夜「…………」

二人で抱きしめ合う。

その姿を、月影の全員が黙って見ていた。

そして――。

黒羽が静かに拳を握る。

黒羽「……やっぱり、あの二人には何かある」

その瞬間。

旧校舎の奥から――。

ガタンッ!!

大きな音が響いた。

星羅「……!」

全員が一斉に顔を上げる。

今度は、誰も動かなかった。

暗い廊下の先。

そこから、誰かの声が聞こえた。

「――月影。来るのが遅ぇんだよ」

黒羽「……行くぞ」

星羅は星夜の手を握った。

今度は、離さない。

何が待っていようと、二人一緒に進むために。