月影に咲く、ただ1人の華

旧校舎の薄暗い廊下。

床に転がった鎖から、私はどうしても目を離せなかった。

――ジャラ……。

小さな音が響くたび、身体が震える。

星羅「……っ」

息が浅くなる。

頭では分かっている。

ただの古い鎖。

ここは学校。

今はみんながいる。

それなのに、身体だけがあの日を思い出してしまう。

夜凪「……星羅」

返事ができない。

夜凪は私の様子を見て、少しだけ眉を寄せた。

そして、私の前に立つ。

ちょうど鎖が見えなくなる位置に。

夜凪「……大丈夫だ」

星羅「……」

夜凪「鎖を見るな」

ゆっくりと声を落とす。

夜凪「俺を見ろ」

私は震えながら顔を上げた。

目の前にいる夜凪を見る。

いつもの鋭い目。

いつもなら、少し怖いと思う目。

でも今は、その目を見ている方が落ち着いた。

夜凪「……そう」

星羅「…………」

夜凪「ゆっくり息しろ」

言われた通りに、ゆっくり息を吸う。

少しだけ、苦しさが和らいだ。

夜凪「……星夜もいるから」

星羅「…………!」

その言葉に、私はハッとした。

星羅「……星夜?」

慌てて後ろを振り返る。

そこにいた星夜は――。

顔が真っ青だった。

星羅「……っ!」