月影に咲く、一輪の華

旧校舎へ続く廊下を、私たちは急いで進んでいた。

星羅「……」

さっきまでの明るさは、もうなかった。

朱雀に連れ去られた生徒たちがいる。

星夜たちが向かっている。

だから、私も一緒に行く。

ただ、それだけを考えていた。

やがて古びた旧校舎の入口が見えてくる。

ギィィ……。

誰かが扉を開けた瞬間、錆びついた蝶番が嫌な音を立てた。

星羅「…………」

足が止まる。

古い建物特有の、湿った空気。

薄暗い廊下。

剥がれかけた壁。

そして――。

廊下の端に、古びた鉄の鎖が転がっていた。

「…………」

息が止まった。

カチャ……。

風に揺れた鎖が、床を擦る。

その音を聞いた瞬間。

頭の奥で、何かが弾けた。

――ジャラッ。

冷たい。

手首に食い込む感覚。

暗い部屋。

閉じた扉。

動けない身体。

怖くて泣いている星夜。

『姉ちゃん……』

『姉ちゃん、助けて……』

星羅「……っ」

呼吸ができない。

違う。

ここはあの場所じゃない。

分かってる。

分かってるのに、身体が動かない。

視界が滲む。

そのとき、少し前を歩いていた夜凪が足を止めた。

夜凪「……?」

私は気づかないまま、その背中へ近づいていた。