月影に咲く、一輪の華

黒羽「……星羅」

星羅「ん?」

黒羽「今回のことは、俺たちに任せろ」

星羅「でも――」

黒羽「お前が星夜を守りたいのは分かった」

黒羽は真っ直ぐ私を見る。

黒羽「だからって、一人で全部背負う必要はねぇ」

星羅「…………」

その言葉に、胸の奥が少しだけざわついた。

一人で守る。

それが当たり前だと思っていた。

星夜を守るのは私の役目。

私が強くならなきゃいけない。

私が星夜の前に立たなきゃいけない。

そうじゃないと――また、あの日みたいになる。

星羅「……でも」

黒羽「ん?」

星羅「私が守らなきゃ」

無意識に自分の手首を握る。

そこに何もないのに。

冷たい鎖が巻きついているような感覚が、一瞬だけ蘇った。

星羅「私が弱かったから……」

星夜「姉ちゃん」

低い声に、私は顔を上げる。

星夜が私を見ていた。

星夜「……もういい」

星羅「…………」

星夜「姉ちゃんが自分を責める必要ねぇよ」

星羅「でも……」

星夜「俺は、姉ちゃんに守られるだけの弟じゃねぇ」

その言葉に、胸が詰まる。

星夜「今度は俺が姉ちゃんを守る」

星羅「……星夜」

星夜の目は真っ直ぐだった。

あの日。

私が鎖に繋がれていた姿を、目の前で見ていた弟。

何もできなかった自分を、今でも責め続けている。

だからこそ、私は分かっている。

星夜もまた、私を守りたいと思っている。

それでも――。

星羅「……それでも私は、星夜を守るよ」

星夜「……」

星羅「それだけは譲れない」

星夜「……頑固」

星羅「星夜にだけは言われたくない!」

思わず笑ってしまう。

すると、さっきまで張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ。

來夢「……なんだよ。結局いつもの二人じゃん」

豹牙「まあ、それでいいんじゃねぇの」

朔夜「互いに守りたいなら、どちらも無理に変える必要はないだろ」

黒羽「……そうだな」

そして、ずっと黙っていた夜凪が口を開いた。

夜凪「……ただ」

星羅「?」

夜凪「星羅が一人で突っ込むのは、やめろ」

星羅「え?」

夜凪「……見てて危なっかしい」

星羅「心配してくれてるの?」

夜凪「……別に」

そう言って、夜凪は視線を逸らす。

星羅「ふふっ」

なんだか少し嬉しい。

この人も、ちゃんと私のことを見てくれているんだ。

星羅「分かった。気をつけるね」

夜凪「……ああ」

その短い返事が、昨日より少しだけ優しく聞こえた。