月影に咲く、一輪の華

星羅「……何か変だよ?」

私がそう言うと、來夢が少し困ったように笑った。

來夢「ごめん。急に呼び出したのに、なんでもない」

星羅「なんでもないなら呼ばないでよ〜!」

來夢「それはそうなんだけどさ」

豹牙「……でも気になるだろ」

星羅「何が?」

豹牙「お前のこと」

星羅「私?」

豹牙「ああ」

豹牙が腕を組みながら、私を見る。

豹牙「昨日会ったばっかだってのに、もう学校中がお前の話してる」

星羅「えぇ……」

豹牙「しかも今日、朱雀までお前に目ぇつけた」

星羅「……私が?」

黒羽「ああ」

黒羽が静かに頷く。

黒羽「昨日までなら、星夜の姉が転入してきた。それだけだった」

黒羽「でも今日、お前が俺らと一緒にいるところまで知られた」

星羅「……」

黒羽「それに、お前の強さもな」

星羅「別に隠してるわけじゃないけど……」

朔夜「そういう問題じゃない」

朔夜が口を挟む。

朔夜「月影と関わりがあると知られれば、お前自身が狙われる可能性もある」

星羅「……」

私は少し考える。

正直、そんなことまで考えてなかった。

ただ星夜と一緒にいたくて、この学校に来た。

友達ができて嬉しくて。

みんなと過ごすのが楽しくて。

それだけだった。

星羅「……でも」

黒羽「ん?」

星羅「星夜がいるなら、私は大丈夫だよ」

星夜「……姉ちゃん」

星羅「それに、みんなもいるでしょ?」

そう言って笑う。

黒羽たちが一瞬、黙った。

星羅「だから心配しなくていいよ!」

來夢「……お前、本当にそういうとこだよな」

星羅「何が?」

來夢「自分が狙われるかもしれないって話してるのに、全然怖がらない」

星羅「だって……」

私は星夜を見る。

星羅「私が怖いのは、自分が傷つくことじゃないから」

星夜「…………」

星羅「星夜が傷つくことの方が、ずっと怖い」

その言葉に、星夜の表情が僅かに曇る。

星羅「だから星夜に何かする人がいたら――」

私は笑った。

星羅「私が守るよ」

今度は、誰も笑わなかった。

そして黒羽が、ゆっくり口を開く。

黒羽「……分かった」

星羅「?」

黒羽「お前がそういう奴だってことは、もう十分分かった」

黒羽は立ち上がる。

黒羽「だから俺たちも、お前を守る」

星羅「……え?」

黒羽「あいつらが何をしてこようがな」

星羅「……」

胸の奥が、ほんの少し温かくなった。

私には星夜がいる。

そして――。

いつの間にか、私には守ってくれる人たちも増えていた。