月影に咲く、一輪の華

星羅「分かった!」

勢いよく立ち上がると、先生が少し驚いた顔でこちらを見る。

先生「星羅さん、どこへ行くんですか?」

星羅「黒羽に呼ばれたみたいです!」

先生「……授業中ですよ?」

星羅「……あ」

すっかり忘れてた。

叶多「お前、ほんと自由だな」

星羅「だって呼ばれたんだもん!」

先生「用事が済んだら、ちゃんと戻ってきてくださいね」

星羅「はーい!」

教室を出る。

廊下を歩きながら、私は首を傾げていた。

星羅「黒羽、何の用かな?」

わざわざ授業中に呼ぶなんて、何かあったのかな。

少し急ぎ足で屋上へ向かう。

扉を開けると――。

星羅「黒羽!」

そこには、月影のみんなが揃っていた。

星羅「みんな、どうしたの?」

來夢「来たか」

琉生「星羅さん!」

星羅「琉生もいる!」

嬉しくなって笑う。

けれど、いつもなら誰かがすぐに返事をしてくれるのに、今日は妙に静かだった。

星羅「……?」

私はみんなの顔を見る。

黒羽も。

朔夜も。

來夢も。

豹牙も。

夜凪も。

そして星夜も。

全員、少し真剣な顔をしている。

星羅「……何かあった?」

黒羽「いや、何かあったっていうよりな」

黒羽が一歩こちらへ近づく。

黒羽「昼間のこと、少し聞きたい」

星羅「昼間?」

黒羽「ああ」

星羅「朱雀のこと?」

黒羽「それもある」

星羅「?」

黒羽は少し迷ったように私を見る。

そして――。

黒羽「……お前、本当にあんなこと言うくらい、星夜を守りたいんだな」

星羅「……?」

何を今さら。

私は当たり前のように頷く。

星羅「うん」

星羅「だって星夜は、私の一番大切な弟だもん」

星夜「…………」

星羅「何があっても守るよ」

その言葉に、黒羽たちは何も言わない。

ただ、星夜だけが私を見つめていた。

星羅「……どうしたの?」

星夜「……姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「……こっち来い」

星羅「?」

言われるまま星夜のところへ歩いていく。

すると星夜は、私の頭に手を置いた。

星夜「……もういい」

星羅「何が?」

星夜「何でもねぇ」

星羅「またそれ!」

思わず笑う。

でも――。

その笑顔を見ながら、黒羽は確信していた。

星羅が星夜を守ろうとする気持ちは、ただの姉弟愛なんかじゃない。

もっと深くて。

もっと切実で。

――何かを失った人間だけが持つような、強い執着だった。