月影に咲く、一輪の華

校門裏へ向かう廊下を、みんなで急いで進む。

星羅「ねぇ星夜、本当に大丈夫?」

星夜「大丈夫だって」

星羅「でも喧嘩なんでしょ?」

星夜「ああ」

星羅「じゃあやっぱり心配!」

星夜「……姉ちゃんは心配しすぎ」

星羅「だって星夜だもん」

ぎゅっと腕を掴む。

星夜「……」

いつもなら「離れろ」と言うのに、今は何も言わない。

それだけ、事態がいつもと違うんだと分かった。

前を歩いていた黒羽が振り返る。

黒羽「星羅」

星羅「ん?」

黒羽「絶対に俺たちから離れるな」

星羅「分かった!」

朔夜「特に相手には近づくなよ」

星羅「うん」

豹牙「……まあ、星夜より強いらしいけどな」

星羅「らしいじゃなくて強いよ?」

豹牙「はいはい」

來夢「でも、今回は人数が多いからな」

琉生「星夜さん、俺も一緒に行きます」

星夜「お前は後ろにいろ」

琉生「でも……」

星夜「命令」

琉生「……はい」

星夜の声がいつもより低い。

みんなもそれ以上は何も言わない。

やがて校舎の端まで来ると、外から怒鳴り声が聞こえてきた。

「てめぇら月影だろ!」

「一年一人に何人で囲んでんだよ!」

「関係ねぇ奴は引っ込んでろ!」

星羅「……」

足を止める。

遠くに、何人もの男の子が集まっているのが見えた。

その中心に、月影の制服を着た一年生がいる。

その周りを、見慣れない制服の男たちが囲んでいた。

星羅「……星夜」

星夜「ああ」

星夜の表情が変わる。

黒羽も、朔夜も、豹牙も。

さっきまでの学校での顔とは全然違う。

黒羽「……来たぞ」

敵の一人がこちらに気づく。

「……月影の奴らだ!」

一斉に視線がこちらへ向いた。

そして――。

その中にいた一人の男が、私を見た瞬間に目を細めた。

「……なんだ?」

「女?」

「なんで月影に女がいるんだ?」

ざわつき始める。

私は思わず星夜の腕を掴んだ。

だけど――。

次に聞こえてきた言葉で、胸の奥が凍りついた。

「……まさか、あれが噂の女か?」

「星夜の姉ちゃんだろ」

「へぇ……」

男が、ニヤッと笑った。

「面白ぇもん連れてきたな、月影」

その瞬間。

星夜が一歩前へ出た。

星夜「……姉ちゃんに近づくな」

低く、冷たい声。

その声を聞いた瞬間、私は気づいた。

星夜が、本気で怒っている。

そして――。

私の中でも、何かが静かに切り替わった。