月影に咲く、一輪の華


「いただきます!」

みんなで昼食を食べ始めた、そのときだった。

屋上の扉が勢いよく開いた。

バンッ!!

全員が一斉に振り返る。

そこに立っていたのは、見覚えのない男子生徒だった。

男「……星夜!」

星羅「……?」

男は息を切らしている。

星夜「何だ」

男「……一年の奴らが、他校の奴らと揉めてる」

豹牙「……は?」

男「校門の裏だ。相手、かなりいる」

一瞬で屋上の空気が変わった。

さっきまで笑っていたみんなの顔から、笑顔が消える。

黒羽「何人だ?」

男「十人以上はいると思います」

朔夜「……他校って、どこだ?」

男「朱雀の奴らです」

その名前を聞いた瞬間、黒羽の目つきが変わった。

來夢「朱雀……?」

星羅「……?」

私はみんなの顔を見渡す。

さっきまでとは、明らかに違う。

星夜も立ち上がっていた。

星羅「星夜?」

星夜「姉ちゃんはここにいろ」

星羅「え?」

星夜「絶対に来るな」

そう言って、星夜が屋上の扉へ向かう。

私は反射的に、その腕を掴んだ。

星羅「待って」

星夜「……姉ちゃん」

星羅「どこ行くの?」

星夜「ちょっと行ってくる」

星羅「喧嘩?」

星夜「……ああ」

その一言を聞いた瞬間。

胸の奥が、嫌な音を立てた。

昔と同じ。

大切な人が、自分の知らないところで傷つくかもしれない。

そんな考えが頭をよぎる。

星羅「……怪我しない?」

星夜「大丈夫だ」

星羅「本当に?」

星夜「ああ」

星羅「……」

それでも手を離せない。

星夜「姉ちゃん」

星羅「……何?」

星夜「俺は大丈夫だから」

優しい声。

でも――。

私は知っている。

「大丈夫」という言葉だけでは、何も安心できないことを。

星羅「……私も行く」

星夜「駄目だ」

星羅「嫌」

星夜「姉ちゃん!」

星羅「星夜に何かあったら、私は絶対に嫌だから」

屋上が静まり返る。

私は自分でも驚くほど真剣な顔で、星夜を見つめていた。

そして――。

黒羽が、静かに口を開いた。

黒羽「……星羅」

星羅「何?」

黒羽「お前、本当に来る気か?」

星羅「うん」

黒羽は一瞬だけ私を見つめた。

そして、ふっと笑った。

黒羽「……分かった」

朔夜「黒羽?」

黒羽「こいつが来るなら、俺らが守ればいい」

星羅「……!」

豹牙「マジかよ」

來夢「面白くなってきたな」

夜凪「……」

琉生「星羅さん……」

星夜「…………」

私たちはそのまま、屋上を出た。

向かう先は――。

校門裏。

そこで私は、初めて。

月影と敵対する暴走族――朱雀と出会うことになる。