月影に咲く、一輪の華


昼休みのチャイムが鳴った瞬間、私は勢いよく立ち上がった。

星羅「お昼ー!」

叶多「お前、本当に昼飯好きだな」

星羅「だって一日の楽しみの一つだもん!」

朝から授業を頑張ったんだから、ご褒美くらいいいよね。

それに今日は――。

星羅「星夜のところ行かなきゃ!」

鞄からお弁当を取り出して、教室を出る。

昨日と同じように、屋上へ向かう。

すると、廊下の途中で何人かの男子が声をかけてきた。

「星羅!」

「一緒に屋上行っていい?」

「昨日の話聞きたい!」

星羅「もちろん!みんなで行こう!」

「やった!」

みんなでぞろぞろと歩き出す。

私はその中で楽しそうに笑っていた。

でも、頭の中にあるのは一人だけ。

――星夜。

早く会いたい。

一緒にお昼を食べたい。

顔を見たい。

声を聞きたい。

それだけ。

屋上の扉が見えてきた瞬間、私は思わず駆け出した。

星羅「星夜ー!」

扉を開ける。

そこには、いつものように星夜たちがいた。

星夜「……姉ちゃん」

星羅「星夜!」

私は一直線に星夜のところへ向かい、その腕にぎゅっと抱きつく。

星夜「……またかよ」

星羅「だって会いたかった!」

星夜「朝会っただろ」

星羅「朝は朝!」

星夜「……はいはい」

そんなやり取りをしながら、私は星夜の顔を見上げる。

怪我はない。

いつもと変わらない。

それだけで安心する。

――私にとって、星夜は何より大切な存在。

昔、私が弱かったせいで。

私が守れなかったせいで。

星夜を泣かせた。

だからもう二度と、あんな顔をさせたくない。

星羅「……星夜」

星夜「ん?」

星羅「今日も元気そうでよかった」

星夜「……何だよ急に」

星羅「なんとなく!」

笑って、また抱きつく。

星夜「……変な姉ちゃん」

星羅「大好きな弟だからね!」

星夜「……知ってる」

そのやり取りを見ていた黒羽が、ふっと目を細める。

昨日、星羅が呟いた言葉。

――命に変えても守りたいものがある。

その「もの」が何なのか。

今なら、少しだけ分かる気がした。

そして黒羽は、何も言わずに星羅と星夜を見つめていた。