月影に咲く、一輪の華

校舎へ向かって歩いていると、さっきから感じていた視線がさらに増えていく。

星羅「……やっぱり見られてるよね?」

來夢「うん。めちゃくちゃ見られてる」

星羅「うぅ……」

昨日まではまだ「転入生だから見られてるのかな」くらいに思っていた。

でも今日は明らかに違う。

すれ違うたびに振り返られるし、少し離れたところからこそこそ話している声まで聞こえてくる。

「星夜の姉ちゃんだって」

「月影の屋上にいたらしいぞ」

「豹牙とも普通に話してたって」

「ていうか、あの顔で喧嘩も強いんだろ?」

星羅「……ん?」

最後の言葉に、私は思わず振り返った。

星羅「私、喧嘩強いって誰が言ったの?」

來夢「さあ?」

星夜「……昨日のバスケ見てた奴が言ったんじゃねぇか」

星羅「バスケだけで喧嘩強いって分かるの?」

星夜「……姉ちゃんの場合は、そう思われてもおかしくねぇだろ」

星羅「そうかなぁ?」

首を傾げる。

すると來夢が苦笑した。

來夢「まあ、実際星夜より強いんだろ?」

星羅「うん!」

即答する。

來夢「そこは迷わないんだな」

星羅「だって星夜より強いもん」

星夜「……自分で言うな」

星羅「事実だからいいの!」

來夢「ははっ!」

そんな話をしながら歩いていると、前方から黒羽と朔夜が歩いてきた。

黒羽「おはよ」

星羅「黒羽くん!朔夜くん!おはよう!」

朔夜「おはよう」

黒羽「朝から元気だな」

星羅「だって今日も学校楽しいから!」

黒羽「そうかよ」

黒羽が笑う。

そのとき、黒羽の視線が一瞬だけ私の後ろへ向いた。

私もつられて振り返る。

だけど、そこには普通に登校している生徒たちしかいない。

星羅「どうしたの?」

黒羽「……いや」

まただ。

最近みんな「何でもない」って言う。

星羅「みんな何か隠してない?」

來夢「隠してないって」

星羅「ほんと?」

來夢「ほんと」

星羅「怪しい……」

私が疑うように目を細めると、黒羽が吹き出した。

黒羽「お前、そういう顔もすんのな」

星羅「どんな顔!?」

黒羽「いや、面白ぇ顔」

星羅「ひどい!」

笑いながら黒羽の肩を軽く叩く。

すると――。

少し離れた場所から、また声が聞こえた。

「……あれ、星羅じゃね?」

「誰かと一緒にいるぞ」

「黒羽さんたちまで……?」

「マジかよ」

その瞬間、黒羽の表情がほんの少し変わった。

そして星夜も、何も言わずにそちらを見る。