月影に咲く、一輪の華

校門をくぐると、昨日までとは明らかに違う空気を感じた。

「……あれが星羅?」

「そうじゃね?」

「めっちゃ綺麗じゃん……」

「星夜と双子ってマジ?」

「しかも月影の屋上にいたんだろ?」

あちこちから聞こえてくる声。

星羅「…………」

思わず周りを見渡す。

やっぱり、みんな私を見てる。

星羅「ねぇ星夜……」

星夜「気にすんなって言っただろ」

星羅「でも、なんか恥ずかしい……」

星夜「そのうち慣れる」

星羅「慣れるかなぁ」

星夜「姉ちゃんは気にしすぎ」

星羅「だって昨日まで普通だったのに!」

星夜「一昨日転入してきたんだから、少しずつ噂になるのは普通だろ」

星羅「そんなものなの?」

星夜「ああ」

納得したようなしないような。

でも、星夜が一緒にいてくれるから、そこまで怖くはない。

校舎へ入ろうとしたところで――。

「星夜!」

聞き覚えのある声がした。

振り返ると、來夢がこちらへ走ってくる。

來夢「おはよ!」

星羅「來夢、おはよう!」

來夢「お前ら今日も一緒かよ」

星羅「当たり前じゃん!」

來夢「だよな」

笑いながら私たちを見る。

すると、來夢が周囲を見渡して苦笑した。

來夢「……星羅ちゃん、今日めちゃくちゃ見られてるな」

星羅「やっぱりそうだよね?」

來夢「ああ。昨日の倍くらいいるんじゃね?」

星羅「そんなに!?」

來夢「昨日、屋上にいたことまで噂になってるっぽい」

星羅「えぇ……」

まさか、そんなところまで知られているとは思わなかった。

星羅「私、何か悪いことした?」

來夢「してないしてない」

星羅「じゃあなんで?」

來夢「女子が一人しかいない男子校に、突然めちゃくちゃ美人な転入生が来たんだぞ?」

星羅「……あ」

來夢「そりゃ噂になるって」

星羅「なるほど……」

やっと納得した。

でも、これからずっとこんなに見られるのかな。

ちょっとだけ困っていると、星夜が私の頭に手を乗せた。

星夜「気にすんな」

星羅「……うん」

その瞬間、周囲からまたざわめきが起こる。

「星夜が女子の頭撫でてる……」

「しかもあの星夜が……」

「やっぱり姉ちゃんって特別なんだな」

星羅「…………」

星夜「……」

來夢「……」

三人で顔を見合わせる。

そして來夢が吹き出した。

來夢「今日一日、すげぇことになりそうだな」

星羅「……もう帰りたいかも」

星夜「まだ学校来たばっかだろ」

星羅「だって恥ずかしい!」

そう言いながらも、私は星夜の腕にぎゅっと抱きついた。

星夜「……まあ、いいけど」

その光景を、少し離れた場所からじっと見ている人物がいた。

その視線に、私はまだ気づいていなかった。