月影に咲く、一輪の華


星羅「ねぇ黒羽」

黒羽「ん?」

星羅「月影って、どんな族なの?」

黒羽「どんなって?」

星羅「昨日からずっと気になってたの!」

黒羽「……そうだな」

黒羽が少し考えるように空を見上げる。

黒羽「俺たちは、ただバイク乗って喧嘩するだけの族じゃねぇよ」

星羅「……?」

黒羽「守るもんがあるから、月影って名前を背負ってる」

その言葉に、私は少しだけ目を見開いた。

守るもの。

その言葉が、胸の奥に引っかかった。

私は何となく空を見上げる。

青い空に、白い雲がゆっくり流れている。

そして、誰に聞かせるつもりもなく、小さく呟いた。

星羅「……なら、私もぴったりだな」

黒羽「……?」

自分でも、どうしてそんなことを言ったのか分からない。

ただ、頭に浮かんだのは一人だけだった。

星羅「命に変えても守りたいものがあるから」

その瞬間。

「…………」

背後から、物音がした。

私は振り返る。

そこには――星夜が立っていた。

いつからそこにいたのか分からない。

星夜「……姉ちゃん」

星羅「……え?」

星夜が、じっと私を見ている。

いつもの無愛想な顔。

だけど、どこか違った。

星羅「どうしたの?」

星夜「……今、何て言った?」

星羅「え?」

星夜「……」

私は少し考える。

星羅「何のこと?」

星夜「……いや」

星夜はそれ以上何も言わなかった。

ただ、私の顔をしばらく見つめていた。

星羅「……?」

なんだろう。

変なの。

すると、黒羽が星夜を見る。

黒羽「星夜」

星夜「……何」

黒羽「お前、今の聞いてたのか?」

星夜「……ああ」

短い返事。

その声には、いつもの軽さがなかった。

星羅「二人ともどうしたの?」

星夜「……何でもねぇ」

そう言って星夜は私の頭に手を置く。

ぽん、と優しく撫でる。

星羅「……?」

星夜「姉ちゃんは、そのままでいい」

星羅「うん?」

意味が分からない。

でも、星夜がそう言うならきっと大丈夫。

私はいつものように笑った。

星羅「じゃあ、そろそろ何かしようよ!」

來夢「切り替え早っ!」

星羅「だってせっかく晴れてるんだよ?」

豹牙「またバスケか?」

星羅「もちろん!」

さっきまで胸の奥にあった何かは、いつの間にか消えていた。

だけど――。

黒羽だけは、私がさっき呟いた言葉を忘れられずにいた。

『命に変えても守りたいものがある』

あの言葉が、ただの冗談ではないことだけは。

なぜか、分かってしまった。