月影に咲く、一輪の華

ボールを何度か取り合っているうちに、すっかり夢中になっていた。

星羅「もう一回!」

豹牙「お前、元気すぎだろ」

星羅「まだまだいけるよ!」

來夢「俺もう疲れた……」

星羅「えー!早いよ!」

來夢「星羅ちゃんの体力がおかしいんだって!」

黒羽「確かにな」

星羅「そんなに?」

朔夜「普通の女子なら、そろそろ疲れててもおかしくない」

星羅「そうかなぁ?」

自分では全然疲れていない。

むしろ身体を動かしたことで、眠気まで吹き飛んだ。

豹牙「じゃあ次、俺と一対一な」

星羅「いいよ!」

豹牙「今度は絶対取らせねぇ」

星羅「いひひ。できるかなぁ?」

豹牙「……その顔、腹立つ」

星羅「また言ってる!」

二人で向かい合う。

豹牙がボールをつく。

今度はさっきより速い。

右、左、右――。

私は動きを目で追う。

豹牙「……!」

一瞬。

ボールが身体の外側へ出た瞬間、私は素早く手を伸ばした。

星羅「もらった!」

豹牙「っ!」

ボールを奪う。

そのまま走り出そうとした瞬間、豹牙が横から追いついてきた。

星羅「速っ!」

豹牙「逃がすかよ!」

星羅「負けない!」

二人でゴールへ向かって走る。

その様子を見ていた黒羽たちが笑っている。

來夢「なんかもう、普通にいい勝負じゃん!」

朔夜「豹牙も本気になってるな」

黒羽「そりゃあ、あそこまで煽られたらな」

星夜「……姉ちゃん」

星羅「なにー?」

星夜「無茶すんなよ」

星羅「大丈夫!」

そう答えた瞬間――。

豹牙「隙あり!」

星羅「わっ!」

ボールを奪われる。

豹牙「取った!」

星羅「ずるい!」

豹牙「何がだよ!」

星羅「油断させた!」

豹牙「それも勝負だろ」

星羅「むー……」

悔しくて頬を膨らませる。

豹牙「……」

星羅「?」

豹牙が私の顔をじっと見ている。

星羅「どうしたの?」

豹牙「……いや」

星羅「?」

豹牙「お前、そういう顔もすんだな」

星羅「どういう顔?」

豹牙「……なんでもねぇ」

そう言って豹牙は視線を逸らした。

私はよく分からないまま首を傾げる。

星羅「じゃあ次は絶対勝つ!」

豹牙「……おう」

またボールを構える。

そのとき、屋上の扉の向こうから聞き慣れない声がした。

「お前ら、授業サボって何やってんだ?」

全員の動きが止まる。

星羅「……先生?」

黒羽「いや……違ぇな」

扉がゆっくり開く。

そこに立っていたのは――見覚えのない男子生徒だった。