月影に咲く、一輪の華

豹牙「……やってみろ」

豹牙がボールを持った瞬間、さっきまでのふざけた空気が少しだけ変わった。

豹牙「ほら」

星羅「……!」

豹牙が一気に走り出す。

速い。

星羅「待ってー!」

追いかけるけど、簡単には追いつけない。

さすが喧嘩が強いだけあって、身体能力も高いのかな。

でも――。

星羅「……いひひ」

私は少しだけ笑った。

豹牙「……?」

次の瞬間、豹牙が右へ動いた瞬間に合わせて、私は身体を滑り込ませる。

星羅「取った!」

豹牙「……っ!?」

ボールを奪う。

そのまま反転して、一気にゴールへ走る。

豹牙「おい!」

後ろから追ってくる気配。

でも、私は振り返らない。

ゴール前まで来ると、軽くジャンプしてシュートを放つ。

ボールがリングに当たって――。

カコンッ。

そのまま中へ落ちた。

星羅「やったぁ!」

振り返ると、豹牙が呆然と立っていた。

星羅「豹牙、どうしたの?」

豹牙「……お前」

星羅「ん?」

豹牙「マジで強ぇじゃん」

星羅「そう?」

豹牙「そうだよ」

來夢「俺もさっき普通に抜かれたんだけど……」

星羅「ごめん!」

來夢「いや、謝ることじゃないけど!」

黒羽が腕を組みながら、楽しそうに私を見る。

黒羽「なるほどな」

星羅「何が?」

黒羽「星夜より強いって話、嘘じゃなかったんだな」

星羅「だから言ったじゃん!」

星夜「……姉ちゃん」

星羅「何?」

星夜「調子乗るなよ」

星羅「乗ってないよ!」

豹牙「いや、これは乗っていいだろ」

星羅「豹牙が褒めてくれた!」

豹牙「……別に褒めてねぇ」

星羅「褒めたじゃん!」

豹牙「……」

豹牙が少しだけ目を逸らす。

星羅「ふふっ」

なんだか楽しい。

こうやって身体を動かすのも久しぶりだし、みんなと遊ぶのも楽しい。

私はボールを抱えたまま、みんなを見る。

星羅「ねぇ、もう一回やろう!」

來夢「もちろん!」

豹牙「次は負けねぇからな」

星羅「望むところ!」

黒羽「お前ら、授業サボって何やってんだよ」

朔夜「……本当にどうしようもないな」

そう言いながらも、朔夜も少し笑っていた。

私はもう一度ボールを構える。

この学校に来て、まだ二日。

なのに――。

こんなに笑ったのは、久しぶりな気がした。