月影に咲く、一輪の華

そう呟いた豹牙を見て、來夢がニヤニヤしながら近づいていく。

來夢「豹牙、嬉しそうじゃん」

豹牙「は?」

來夢「だって顔が――」

豹牙「うるせぇ」

來夢「まだ何も言ってねぇ!」

黒羽「まあまあ」

黒羽は笑いながら、眠っている星羅を見る。

黒羽「それにしても、こいつ本当に警戒心ねぇな」

朔夜「確かにな。昨日初めて会った俺たちの前で、あんな無防備に寝られるんだからな」

豹牙「……しかも俺の背中でな」

來夢「そこ気にしてんの?」

豹牙「別に」

黒羽「はいはい」

豹牙「……マジで違ぇからな」

そんな会話をしていると、星羅がもぞっと動いた。

星夜「……姉ちゃん?」

星羅「ん……」

今度こそゆっくり目を開ける。

星羅「……あれ?」

ぼんやり辺りを見渡す。

星羅「私、寝てた?」

來夢「爆睡してた」

星羅「うそ!」

黒羽「本当だ」

星羅「……恥ずかしい」

顔を両手で覆う。

すると星夜が私の頭を軽く撫でた。

星夜「別にいいだろ」

星羅「だってみんなの前で寝ちゃった……」

來夢「俺らなんていつもここで寝てるし」

豹牙「気にすることねぇよ」

星羅「……豹牙」

豹牙「ん?」

星羅「さっき背中貸してくれてありがとう!」

豹牙「……別に」

星羅「優しいね!」

豹牙「…………」

また耳が少し赤くなる。

星羅「ん?」

豹牙「何でもねぇ!」

星羅「?」

なんで怒るんだろう。

不思議に思いながらも、私は星夜の膝から降りる。

星羅「よし!もう寝ない!」

來夢「本当?」

星羅「本当!」

黒羽「じゃあ何する?」

星羅「んー……」

屋上を見渡す。

何か楽しいことはないかな。

そのとき、ふと視界に入ったのは、隅に置かれていた古びたバスケットボール。

星羅「……あれ何?」

豹牙「あ?」

星羅「あのボール!」

豹牙「バスケボールだろ」

星羅「ここでバスケできるの?」

黒羽「できるぞ」

星羅「やりたい!」

目を輝かせる私を見て、來夢が笑った。

來夢「じゃあやる?」

星羅「やるやる!」

星夜「……姉ちゃん、怪我すんなよ」

星羅「私が?」

星夜「ああ」

星羅「大丈夫だよ!」

私は立ち上がって、ボールを手に取る。

久しぶりに身体を動かせるのが楽しみで、自然と笑顔になる。

豹牙「……お前、運動もできんのか?」

星羅「どうだろ?」

豹牙「またその顔かよ」

星羅「いひひ」

屋上に、また笑い声が響いた。