月影に咲く、一輪の華


星羅が眠ってから、屋上は少しだけ静かになった。

さっきまであんなに騒がしかったのが嘘みたいだ。

來夢「……寝ると静かだな」

豹牙「お前、それ本人に言ったら怒られるぞ」

來夢「起きてるとずっと喋ってるもんな」

黒羽「まあ、あれだけ元気ならいいだろ」

朔夜「転入して二日目とは思えない馴染み方だけどな」

黒羽「それは俺も思う」

みんなの視線が、星夜の膝の上で眠っている星羅へ向く。

星夜は何も言わず、眠っている星羅の髪が風で顔にかからないように、そっと耳にかけてやった。

その仕草を見て、來夢が目を丸くする。

來夢「……やっぱ星夜、姉ちゃんには優しいな」

星夜「普通だろ」

豹牙「普通じゃねぇよ」

星夜「……そうか?」

豹牙「俺らが同じことしたら絶対殴るだろ」

星夜「当たり前だろ」

豹牙「ほらな」

黒羽「ははっ」

星夜は少しだけ眉を寄せる。

星夜「……姉ちゃんは昔からこうなんだよ」

朔夜「こうって?」

星夜「眠くなったら俺のところに来る。嫌なことがあったら俺に言う。昔からずっと」

少しだけ間を置いて、星夜が眠っている星羅を見る。

星夜「……だから俺が守る」

その声はいつもより小さかった。

誰も茶化さなかった。

星羅がただのブラコンな姉なのではなく、星夜にとっても大切な存在なのだと、みんなにも伝わった気がした。

すると――。

星羅「……んぅ」

小さく身体が動く。

星夜「起きた?」

星羅「……まだ寝る」

星夜「寝てろ」

星羅「うん……」

また目を閉じる。

來夢「起きてねぇじゃん」

黒羽「寝言だな」

豹牙「……」

星羅「……豹牙」

突然名前を呼ばれて、豹牙がびくっとする。

豹牙「……何だよ」

星羅「背中……また貸してね……」

豹牙「…………」

一瞬、豹牙が固まる。

來夢「ぷっ……!」

黒羽「はははっ!」

朔夜「……災難だな」

豹牙「笑うな!!」

星羅「……ふふ」

眠ったまま、星羅が小さく笑った。

豹牙「……寝言かよ」

そう呟きながらも、豹牙の耳はまた少し赤くなっていた。