月影に咲く、一輪の華


豹牙「……もういい」

呆れたように呟く豹牙の背中に、私はそのまま身体を預ける。

星羅「ここ、ほんと落ち着く……」

豹牙「……そうかよ」

さっきまで文句を言っていたのに、もう諦めたみたい。

私は空を見上げる。

雲がゆっくり流れていて、春の風が頬を撫でていく。

ぽかぽかして気持ちいい。

星羅「……ふぁ」

またあくびが出る。

來夢「また眠くなってんじゃん」

星羅「んー……ちょっとだけ……」

豹牙「おい、まさか俺の背中で寝る気じゃねぇだろうな?」

星羅「……いい?」

豹牙「よくねぇよ」

星羅「じゃあ……だめかぁ」

しょんぼりしながら身体を起こそうとする。

すると――。

星夜「姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「こっち来い」

星羅「……!」

私はすぐに豹牙から離れて、星夜のところへ向かう。

星羅「星夜〜」

星夜「眠いんだろ」

星羅「うん」

星夜「じゃあ、ここ」

そう言って星夜が自分の膝を軽く叩く。

星羅「いいの?」

星夜「いつもそうだろ」

星羅「やった!」

私は嬉しくなって、星夜の膝の上にちょこんと座る。

そのまま身体を預けると、星夜が自然に私の背中を支えてくれた。

星羅「やっぱりここが一番落ち着く〜」

星夜「……知ってる」

來夢「……すげぇな」

黒羽「何が?」

來夢「星夜、完全に慣れてる」

豹牙「……確かにな」

朔夜「昔からなんだろ」

星夜「……うるせぇ」

星羅「……んぅ」

みんなの声が少しずつ遠くなっていく。

星夜の体温が心地いい。

安心する。

やっぱり私は、星夜のそばが一番好き。

星羅「……星夜」

星夜「ん?」

星羅「今日……一緒に帰ろうね」

星夜「ああ」

星羅「絶対だよ……?」

星夜「分かってる」

その声を聞いて安心した私は、ゆっくり目を閉じた。

しばらくすると、寝息が聞こえ始める。

來夢「寝た?」

星夜「ああ」

黒羽「……ほんと幸せそうな顔してんな」

豹牙「……」

豹牙は何も言わず、眠っている星羅を見ていた。

さっきまで自分の背中に寄りかかっていた感触が、まだ残っている気がする。

豹牙「……変な奴」

小さく呟く。

けれど、その口元はほんの少しだけ緩んでいた。