月影に咲く、一輪の華


すると、豹牙が私を見ながら口元を緩めた。

豹牙「お前、ほんとここ気に入ったんだな」

星羅「うん!」

私は笑顔で返事をすると――。

そのまま豹牙の背中にゴローンと身体を預けた。

豹牙「…………は?」

星羅「んー……」

ちょうどいい。

豹牙の背中、思ってたより楽だ。

星羅「ここ気持ちいい〜」

豹牙「いや、ちょっと待て」

星羅「何?」

豹牙「なんで俺の背中?」

星羅「だってちょうどいいんだもん」

豹牙「…………」

豹牙が固まっている。

どうしたんだろう?

星羅「豹牙?」

豹牙「……なんだよ」

星羅「顔赤いよ?」

豹牙「お前が急に乗ってくるからだろ!!」

星羅「えー?別にいいじゃん」

豹牙「よくねぇよ!」

黒羽「はははっ!」

來夢「豹牙、またやられてんじゃん!」

朔夜「……完全に振り回されてるな」

豹牙「うるせぇ!!」

私はみんなが笑っているのを見て、つられて笑う。

星羅「ふふっ。みんな面白い!」

豹牙「笑ってる場合じゃねぇだろ!」

星羅「なんで?」

豹牙「……もういい」

豹牙が諦めたようにため息をつく。

でも、私をどかそうとはしない。

そのまま私は豹牙の背中に身体を預けて、空を見上げる。

気持ちいい。

なんだか眠くなってきたかも。

そんな私たちを少し離れたところから見ていた星夜が、無言で豹牙を見つめていた。

豹牙「……なんだよ、星夜」

星夜「……姉ちゃんから離れろ」

豹牙「俺からじゃねぇ!こいつが勝手に乗ってきたんだよ!」

星羅「豹牙の背中気持ちいいよ〜」

豹牙「そういうこと言うな!!」

また屋上に笑い声が響いた。

私はただ楽しくて笑っているだけ。

自分の何気ない言葉や行動が、少しずつ誰かの心を乱しているなんて――このときの私は、知る由もなかった。