月影に咲く、一輪の華


お弁当を食べながら、みんなでくだらない話をしていると、昨日よりずっと自然に会話に入れている自分に気づいた。

星羅「ねぇ豹牙!」

豹牙「ん?」

星羅「昨日聞き忘れたんだけど、豹牙って普段何してるの?」

豹牙「何って?」

星羅「学校終わったあと!」

豹牙「あー……族の集まり行ったり、適当に走ったり」

星羅「走るってバイク?」

豹牙「そう」

星羅「えー!私も乗ってみたい!」

豹牙「乗ったことねぇの?」

星羅「ない!」

豹牙「意外だな」

星羅「そう?」

豹牙「ああ。お前なら普通に乗ってそう」

星羅「私、バイクより自転車派なんだよね」

豹牙「……なんだそれ」

來夢「はははっ!星羅ちゃん、自転車なの!?」

星羅「だって楽じゃん!」

黒羽「お前、本当に面白ぇな」

星羅「褒められた!」

朔夜「褒めてないと思うぞ」

星羅「えー?」

みんなが笑う。

なんだかこの時間が楽しくて仕方ない。

昨日までは名前も知らなかった人たちなのに、今では普通に話している。

すると、ふと星夜が私のお弁当を覗き込んだ。

星夜「姉ちゃん、それ食わねぇの?」

星羅「これ?」

お弁当の中に残っている卵焼きを見る。

星羅「食べる?」

星夜「いい」

星羅「じゃああげる!」

私は箸で卵焼きを取って、星夜の口元へ持っていく。

星夜「……自分で食える」

星羅「いいから!」

星夜「……」

少しだけ嫌そうな顔をしたあと、星夜は仕方なく口を開ける。

ぱくっ。

星羅「どう?」

星夜「普通」

星羅「えー!美味しいでしょ!」

星夜「普通」

星羅「もう一個食べる?」

星夜「いらねぇ」

星羅「遠慮しなくていいのに」

星夜「してねぇ」

そんな私たちを見て、來夢が固まっている。

來夢「……」

星羅「來夢?」

來夢「いや……」

星羅「どうしたの?」

來夢「お前ら、本当に双子?」

星羅「そうだよ?」

來夢「距離感どうなってんの?」

星羅「普通じゃない?」

來夢「普通じゃないと思う」

叶多がいたらきっと同じことを言うだろう。

でも、私にとってはこれが普通。

ずっとこうしてきたんだから。

すると、今まで黙っていた夜凪がぽつりと口を開いた。

夜凪「……うるさい」

星羅「ごめん!」

夜凪「……別に」

そう言って、また昼飯を食べ始める。

星羅「夜凪ってさ」

夜凪「……何」

星羅「昨日よりちょっと喋ってくれたね!」

夜凪「……」

夜凪の動きが止まる。

星羅「仲良くなってきた?」

夜凪「……知らねぇ」

星羅「そっか!」

私は嬉しくなって笑った。

夜凪はまた何も言わなくなったけど――。

昨日は一言も返してくれなかった。

今日はちゃんと会話になった。

それだけで、少しだけ距離が縮まった気がした。