月影に咲く、一輪の華

星羅は、朱雀の倉庫の前で一度だけ深呼吸した。

今まで何度も開けた扉なのに、今日は妙に緊張する。

星羅「…………よし」

扉を開ける。

星羅「はるちゃん」

遥愛「……星羅さん?」

遥愛が振り返った。

その瞬間、星羅の顔がぱっと明るくなる。

星羅「いた……!」

遥愛「どうしたんですか?」

星羅「会いに来た」

遥愛「……さっきまで会ってたのにですか?」

星羅「うん」

星羅はまっすぐ遥愛の前まで歩いていく。

そして――ぎゅっ。

遥愛「……星羅さん?」

星羅「ちょっとだけ、このままでいさせて」

遥愛「……はい」

遥愛もそっと星羅の背中に腕を回す。

しばらくして、星羅が顔を上げる。

星羅「はるちゃん」

遥愛「はい」

星羅「私ね、ちゃんとみんなに返事してきた」

遥愛「…………」

遥愛の表情が少し変わる。

星羅「みんなすごく優しくて、大切で……だから、いっぱい悩んだ」

遥愛「はい」

星羅「でも、最後に自分の心に聞いたの」

星羅は遥愛の手を取る。

星羅「誰に会いたい?」

遥愛「…………」

星羅「誰と一緒にいたい?」

少しだけ笑う。

星羅「誰を守りたい?」

そして、遥愛を見つめる。

星羅「全部、はるちゃんだった」

遥愛「…………」

星羅「だから……」

星羅の頬が赤くなる。

それでも、目を逸らさない。

星羅「はるちゃんが好き」

遥愛「…………」

星羅「仲間としてじゃない」

握った手に、少しだけ力を込める。

星羅「一人の男の人として、好き」

遥愛はしばらく何も言わなかった。

そして――優しく星羅の手を握り返す。

遥愛「……俺もです」

星羅「…………!」

遥愛「ずっと、星羅さんの答えを待ってました」

星羅「はるちゃん……」

遥愛「でも、もう待つのは終わりにします」

星羅「え?」

遥愛は一歩近づく。

遥愛「俺と付き合ってください」

星羅の目が大きくなる。

そして――。

星羅「……はい!」

嬉しそうに笑って、遥愛へ飛び込む。

ぎゅうっ。

遥愛「……ふふ」

星羅「嬉しい……!」

遥愛「俺もです」

星羅「はるちゃん、大好き!」

遥愛「俺も大好きです、星羅さん」

星羅は胸いっぱいに幸せを感じながら、遥愛の胸元に顔を埋めた。

そして――二人を少し離れた場所から見ていた朱雀のメンバーが、静かに笑う。

紅蓮「……やっと決まったか」

瑛翔「長かったな」

朧「でも、星羅すごく嬉しそう」

刹那「…………ああ」

その時、星羅が顔を上げる。

星羅「はるちゃん」

遥愛「はい?」

星羅「これから、もっといっぱい一緒に遊ぼうね」

遥愛「もちろん」

星羅「海も、遊園地も、また行こう!」

遥愛「……はい」

星羅「それから――」

遥愛「まだあるんですか?」

星羅「あははっ!」

笑い声が倉庫に響く。

こうして――長い夏休みの中で生まれたたくさんの恋は、一つの答えに辿り着いた。

星羅が選んだのは、遥愛だった。

そしてここからは――。

恋人になった二人の、新しい時間が始まる。