月影に咲く、一輪の華

星羅は、ようやく自分の気持ちを決めた。

けれど、その前に――。

自分を好きだと言ってくれたみんなへ、ちゃんと答えを返さなければならない。

一人ずつ、逃げずに向き合った。

豹牙「……答え、聞かせてくれるか?」

星羅「うん」

星羅は少し寂しそうに笑う。

星羅「豹牙、ごめんね。告白してくれて嬉しかった。でも……私は、はるちゃんが好き」

豹牙「……そっか」

一瞬だけ目を伏せ、それからいつものように星羅の頭を撫でる。

豹牙「ちゃんと自分で決めたなら、それでいい」

星羅「……ありがとう」

來夢にも、朔夜にも、黒羽にも。

星羅は同じように、自分の気持ちを伝えた。

そして最後に――。

夜凪。

夜凪「……もう答えは分かってる」

星羅「夜凪……」

夜凪「遥愛だろ」

星羅「…………うん」

夜凪は少しだけ寂しそうに笑った。

夜凪「そっか」

星羅「ごめんね」

夜凪「謝らないで」

そして、星羅の頭を優しく撫でる。

夜凪「俺が好きになったのは、星羅が自分の気持ちに正直なところだから」

星羅「……夜凪」

夜凪「だから最後まで、自分の気持ちを曲げないで」

星羅「うん……」

これで、みんなへの返事は終わった。

星羅は胸の奥に残る寂しさを抱えながら、星夜のところへ向かった。

星羅「……星夜」

星夜「ん?」

星羅は何も言わず、星夜に抱きつく。

ぎゅっ。

星夜「……決まったんだな」

星羅「うん」

星夜「そっか」

星羅は星夜の胸元に顔を埋めたまま、ゆっくり話し始める。

星羅「私ね、星夜が私の全てなの」

星夜「…………」

星羅「命よりも大切な、大好きな弟」

星羅「絶対に星夜を傷つけさせたくないし、私が絶対に守るって決めてる」

星夜「うん」

星羅「でもね……もう一人、守りたい人ができたの」

星夜「…………」

星羅「はるちゃん」

星羅は顔を上げる。

星羅「でも、世界で一番大事なのが星夜なのは、これからも変わらないから」

そして、もう一度強く抱きしめる。

星羅「星夜はずっと、私の大切な弟だから」

星夜「……分かってるよ」

星羅「ほんと?」

星夜「うん」

星夜は星羅の背中を優しく撫でる。

星夜「姉ちゃんが選んだ人なら、俺も応援する」

星羅「……ありがとう」

星夜「ただし」

星羅「?」

星夜「姉ちゃんを泣かせたら、俺が許さない」

星羅「ふふっ……」

涙を浮かべながら笑う。

星羅「大丈夫。はるちゃんは優しいから」

星夜「ならいい」

星羅「……行ってくるね」

星夜「うん」

星羅は最後にもう一度、星夜を抱きしめた。

そして――。

倉庫を出る。

向かう先は、朱雀の倉庫。

遥愛に会うために。

今度は相談じゃない。

迷いもない。

自分の気持ちを伝えるために。

星羅「……はるちゃん」

胸に手を当てる。

心臓が、速く鳴っている。

それでも星羅は笑った。

そして、朱雀の倉庫の扉へ手をかけた。